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9月公演
「賊義賊-zokugizoku-」

この町には"義賊"がいる。

悪から奪い、

貧しい者に分け与える。

義賊の名はコウ。

この物語の主人公。

ひとたび彼女が姿を見せれば、

あちらこちらから歓声が湧き上がる。

今日こそは御縄にしてやると

息巻く同心たちの追跡を掻い潜り、

日夜町中を飛び回る。

 

時を同じくして、

町⺠たちの間でとある噂が

まことしやかに囁かれていた。

この町には"賊"がいる。

闇夜に紛れ現れては、

命を奪い去るという・・・

義賊と賊が出会う時、

時を止めていた因縁が動き出す。

それはやがて町全体を巻き込む

大騒動へと発展していく。

これは義賊の物語。

最強の女賊、

⺠衆の前に推参。

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豪快な笑い声が辺りに響く。 盗賊たちが酒瓶を片手に宴会をしているようである。

その中に一人、やけに食いっぷりのいい女が混ざっている。

盗賊たちの頭と思しき男が、その女に目をつけ肩を抱き、隣に座らせた。

接吻をしようと顔を近付けた瞬間、それまでにこやかだった女の表情が一変。 頭突きを喰らわせ、羽織をバサリと脱ぎ捨てると、金色の賊装束が露わになる。

彼女の名前はコウ。 "不殺"を掲げ、悪から奪い民衆に分け与える義賊の少女。

盗賊たちが呆気に取られている隙に、 コウは頭から千両箱を奪い取り逃げ去っていく。

追手を撒いたところに、岡引を連れたハットの男が飛び込んでくる。 男の名は同心。 コウをお縄につけるため日夜追い回してくる、天敵とも呼べる相手である。

スクープを狙う瓦版屋も加わって、市中を巻き込んでの大騒動。 同心の追跡を難なく掻い潜り、颯爽と去っていくコウ。

その背中を恨めしそうに睨みつける男。 物語冒頭でコウに千両箱を奪われた盗賊の頭である。

その背後に、 黒尽くめの賊が静かに忍び寄る。 気配に気付いた頭が振り向いた瞬間、 賊の刀がその身体を一刀両断する。

賊の名はクロ。 悪人と見れば容赦無く斬り捨てる、 謎の男。

所変わって、コウのアジト。 コウの相棒である丸眼鏡の男・鼠が、 せっせと掃き掃除をしている。

帰宅したコウが着替え終わるや否や、 次の標的を指し示す鼠。 面倒臭そうなコウを急かしたて、 身辺調査に出発する。

次の標的は問屋の主人。 商品を購入した客を、 手駒の賊に殺害させ、 商品を回収するという悪徳店主である。

偵察を終え、客に扮して入店し、 商品を選んで店主の元へ。 その商品には、コウが忍ばせた予告状が。

一気に大騒ぎとなる店内。 噂の義賊に目をつけられた! この店にやってくる!

アジトへ帰還し、出撃準備を整えるコウ。 刃の無い二本の短刀を鼠から手渡される。 素顔を隠すため口元を覆い、

拳をバチンと打ち鳴らすと、 勢い良く飛び出していった。

問屋の屋敷。 予告状を受け、同心率いる岡引集団が警備に当たっている。 統率の取れた動きを見せる岡引集団。 しかし一人だけ、 様子のおかしい男がいる。

その男が集団から逸れ、 単独行動を開始する。

中庭の蔵に辿り着き、錠前を開けようとしているところに同心と岡引集団がやってくる。

同心の号令でポーズを決める岡引集団。 一人だけ全く違うポーズをしてしまう男。

こいつは偽物だ!と、 取り押さえようとする同心。 バレちゃしょうがないと顔の皮を剥ぐ男。

それはコウが変装した姿だった。

同心と岡引集団の追跡から逃げ回るコウ。 鼠を囮にしたりして躱し続ける。

今日こそは捕まえてやると息巻く同心が 超巨大十手を振り回してくるが、 難なく攻略。 屋敷の最奥にある部屋の襖を開ける。

コウの目に飛び込んで来たのは、 串刺しにされ絶命する問屋の店主。 返り血を浴びた黒尽くめの賊がそこに立っていた。

飛び掛かるコウだったが、 いなされてしまう。

追い掛けようとするコウを鼠が制止し、 逃げようと手を引く。

回収される死体と、誰かを斬る/殺すことのできない自分の武器とを眺めながら、 コウの脳裏に過去の記憶が蘇ってくる。

かつて自分を育ててくれた師匠。 どんな悪人であっても、人を殺してはいけないと教えてくれた師匠。

共に鍛錬に励んだ青年と三人で過ごした、温かい記憶。

それがコウの掲げる"不殺"の 信念を形作っている。

アジトに帰還したコウと鼠。 黒尽くめの賊による凶行に怒り狂うコウ。

鼠が、新たな標的の人相描きを持ってくる。そこに描かれているのは玄人。 コウは不貞腐れながらも、調査のため町に出て行く。

町ではとある立札が話題を呼んでいた。

問屋の主人が殺害されたというニュース。

そこには、コウを模した人相描きが。 人違いだ!と憤慨するコウ。

そこに同心と瓦版屋が現れる。人相描きを破り捨てる同心。

無実を訴える瓦版屋。

二人の様子にご機嫌になるコウ。

背後から現れた人物とぶつかり、 転んでしまうコウ。 振り返るとそこには、 次の標的である玄人の姿が。 詫びながら手を差し伸べ、 コウを立たせてあげる玄人。

そこへ玄人の妻らしき女性が追いついてくる。

身辺調査のため、 夫婦の後を尾けることに。

すれ違う人と気さくに挨拶し、困っている人を助け、夫婦仲睦まじく団子を食べ、帰宅して行く玄人。

鼠と合流し、どうだった?と聞かれるも、悪人とは思えない様に困惑するコウ。

そこに突然、殺気が走る。 玄人の屋敷からドレッドヘアーで大柄な、頭領らしき男が現れ、手下と思しき賊たちに指示を出す。

町民を次々に襲い、金品を奪って頭領に差し出す手下たち。

そこへコウが飛び込んで来る。 手下を制圧しながら頭領に迫っていく。

そこへあの黒尽くめの賊・クロもやってくる。互いにやり合いながらも、手下を倒す。

コウ、クロ、頭領による三つ巴。 頭領のパワーに圧されるコウとクロ。

クロの刃が頭領の羽織を斬り裂き、 左腕が露わになる。 目にしたものに、思わず動きを止めるコウとクロ。 頭領の左腕には、 特徴的な模様の刺青があった。

そこに瓦版屋がやってくる。 頭領が殴り飛ばし、また戦いが始まるかと思われたところに、 駆け付けた岡引の笛の音が鳴り響く。 退散していく頭領。

笛の音でやってきた同心を躱し、 クロも去る。 気絶した瓦版屋を抱え、 アジトへと戻って行くコウと鼠。

コウの中で遠い記憶が蘇る。 頭領の左腕に刻まれた刺青に見覚えがあった。

師匠と青年と三人で過ごす日々の中に突如訪れた危機。

あの刺青の男に、自分が羽交い締めにされている記憶。

アジトへ帰還する三人。 尚も気絶している瓦版屋を放り出し、着替え始めるコウ。

と、瓦版屋が目を覚ます。 ずっと追いかけていたあの義賊が目の前にいる!? 思わぬところでコウの正体を知る瓦版屋。

視線を感じたコウが訝しげに振り返ると、即座に眠っている素振り。 しかし見抜かれ、コウと鼠に叩かれる。

そそくさと退散していく瓦版屋。

鼠が再度、玄人の人相描きを取り出す。 こいつの調査はどうなっている? 刺青の男の件もありイマイチ気が乗らないコウだったが、 鼠に急かされ再度身辺調査に出発する。

アンパン片手に玄人夫妻の尾行。 しかしどうしても尻尾を掴めない。

屋敷の前で中の様子を窺っていると、 同心が現れ職務質問される。

焦るコウのもとに瓦版屋が駆けつけ、あちらで騒ぎが起こっているからなんとかしてくれと同心に伝え追い払う。

バチンとウィンクを決めて去っていく瓦版屋。

屋敷の門扉が開き、中から出てきた玄人と衝突してアンパンを落としてしまう。

お詫びに団子屋へ行こうと提案する玄人に、これは身辺調査の良いチャンスだと判断してついていくコウ。

団子屋への道中も、人当たりの良い姿勢を崩さない玄人。鼠の見立てが間違っていたのだろうか。

団子屋の店員が躓いて配膳をこぼしてしまう。思わず悲鳴を上げるコウ。

玄人は店員を気遣いながら笑っている。 その光景がまた、コウの中のかつての記憶と合致していく。

師匠と青年と三人での義賊活動。

その合間に、団子屋に訪れた想い出。

その時も店員が配膳をこぼしてしまって、青年が悲鳴を上げていた。 店員を気遣いながら笑う師匠。

このまま記憶が進むと、 また奴が来てしまう。 左腕に刺青を持つ謎の賊、頭領。

コウと青年を逃すため、 頭領の前に立ちはだかる師匠。 しかしコウが人質に取られてしまい、 手が出せない。

喚き始める頭領。 岡引たちが駆け寄ってくる。 あいつが殺した!あいつが下手人だ!

頭領の狂言に嵌められ、 連行されて行く師匠。 その背中がフラッシュバックする。

悪人には見えない玄人を疑いたくない。 けれどあの刺青の男が玄人の屋敷を出入りしているところを目撃したのも事実。 真実を確かめるため、予告状を玄人に手渡して去るコウ。

帰宅する玄人。 その手に握られた予告状を見て驚く妻。

予告状を受け、玄人の屋敷を警備している同心と岡引たち。

岡引に変装して潜入したコウだったが、同心に見抜かれてしまい手錠で繋がれてしまう。

しかしそんなことは意にも介さず、同心と繋がれたまま屋敷の奥へと進んでいくコウ。どこかにきっと、頭領が潜んでいるはずだ。

一方その頃、自室に戻った玄人はクロによる襲撃を受けていた。 庇おうとした妻も気絶させられてしまい、絶体絶命のところにコウと同心が飛び込んでくる。

コウ、クロ、同心による三つ巴。 クロは執拗に玄人を狙う。 目の前で人を殺させるわけにはいかないと、応戦するコウ。

途中、頭領の手下と思しき賊たちが乱入してくる。玄人と妻を守るような仕草をする賊たち。 やはり玄人と頭領は繋がっているのか。

賊を問答無用で斬り捨てる クロを咎めるコウ。 揉み合いの中で、 コウの覆面とクロの仮面が外れてしまい、 互いの素顔が露わになる。 その顔を見て、 動けなくなるコウとクロ。 互いに見覚えのある顔。 かつて共に師の元で鍛錬に励み、 切磋琢磨していた相手。 あの青年こそが、クロだった。

幼い頃のコウの記憶がフラッシュバックする。師匠とクロと三人で、いつものように義賊活動をしていた。

頭領と、その隣にいる謎の覆面の人物が、忌々しげにそれを見ている。

悪人から取り上げた財宝を 町の人間に配る師匠。 突如として、 場をつん裂くような悲鳴が上がる。

頭領による殺戮。 次々と殺されていく町民たち。 頭領の凶行を制止すべく挑むコウとクロだったが、歯が立たない。

若かりし頃の同心が飛び掛かるも、簡単にいなされてしまった。 頭領と対峙する師匠。 しかし敵わず蹴り飛ばされてしまう。

喚き始める頭領。 岡引たちが駆け寄ってくる。 あいつが殺した!あいつが下手人だ!

頭領の狂言に嵌められ、 連行されて行く師匠。 断片的だったコウの記憶が一つに繋がった。

師匠の教えを破って人斬りをしているところをコウに目撃されてしまった。 狼狽しながら去っていくクロ。

コウもまた、玄人の屋敷を後にする。

危機を脱し、発作を起こしてしまった玄人を優しく介抱する妻。 玄人はそのまま眠ってしまう。

その背後に、黒い影が蠢いていた。

頭領の策略により、多くの町民の命を奪った下手人と見做された師匠。 処刑場は見物人で溢れかえっている。 その中にコウとクロもいる。 断頭される間際、二人の姿を見つけ、 無事であることに安堵した表情を浮かべる師匠。 師の無実を訴えるも、 コウとクロの声は届かない。

為す術のないまま、 師匠は無実の罪で処刑されてしまう。

そこから二人の道は 大きく違えてしまった。

師の仇を討つため、改めて頭領に立ち向かうことを決意するコウ。

そこへ慌てた様子の瓦版屋が飛び込んできて告げる。町が大変なことになってる!

頭領の部下が、覆面と仮面を着用することで偽物のコウとクロになりすまし、町人を殺害しながら暴れ回っている。

コウとクロが応戦するが、偽物によって扇動された町人たちから、二人こそが騒動の犯人だと追い詰められてしまう。

そこへ玄人が飛び込んでくる。 騒ぎの一部始終を見ていた玄人が、偽物の懐から覆面と仮面を奪い取る。 こいつらこそが犯人だ!

形成逆転と思いきや、頭領がやってきて、町人たちを殺戮し始める。 止めに入るコウとクロだったが、 敵わない。 作戦に失敗した部下をも斬り殺した頭領の刃が、コウとクロに向かう。

騒ぎを見守る人混みの中に、 妻の姿を見つけた玄人。 危険だからと抱きかかえ、頭領が落とした剣を不恰好に構えながら逃げようとする。

途端、うんざりしたような表情になる妻。

懐から取り出した小銃を 玄人に向け発砲する。

肩を撃ち抜かれた痛みに疼くまりながらも、突然の出来事に動揺する玄人。

そのまま頭領の隣に立ち並ぶ妻。 頭領と繋がっていたのは玄人ではなく、 妻の方だった。

玄人に止めを刺そうとする頭領を、 妻が静止する。 そこへ同心がやってくる。 悲鳴を上げる妻。 あの人が犯人です、と、玄人を指差す。

岡引たちが駆けつけ、 玄人を連行しようとする。

玄人の背中と、師匠の背中が重なる。 また目の前で無実の人間が捕らわれようとしている。 岡引を静止しようとするコウとクロ。 しかしその言葉は届かない。

助けてほしいと、土下座しようとするコウの肩を優しく止める同心。

ニカッと笑うと、十手を頭領に向け振り下ろした。

コウ・クロ・同心による共同戦線。 三人がかりで頭領に挑んでいく。 町の中で、屋根の上で、路地裏で、川の中で、次々と場所を変えて戦いは続く。

師匠の幻影に背中を押され、 何度も何度も立ち上がる。

コウの武器が弾き飛ばされ、 クロが自身の刀を投げ渡す。 頭領の武器を叩き落とし、 刀を振り上げるコウ。 しかしその腕を師匠に止められた、 ように感じた。 "どんな悪人であっても殺してはいけない" その信条は、眼前の、 師の敵である男に対しても同じことだった。

刀を捨て、力一杯に拳を握ると、頭領の顔面に向かって振り下ろした。

死闘を制したコウ・クロ・同心。 そこへ妻と、瓦版屋に連れられた玄人がやってくる。

ゆっくりと手を差し出す玄人。

しかし妻はその手を取ることなく 去っていった。

逃げる妻だったが、鼠・同心・クロの三人が先回りしていた。 なりふり構わず銃口を向ける妻。 鼠が返り討ちにし、一本背負いで拘束した。

妻を連行する同心と鼠。

一人残されたクロが、 立ち去ろうとした瞬間。

背後から飛び出してきた女が、 その背に短刀を突き刺した。 その女は、クロが殺害した問屋の主人の、その妻だった。

ゆっくり崩れ落ちるクロ。 そこに師匠が現れる。

二人は並んで歩き出し、消えた。

いつもと変わらない日常を過ごすコウ。 悪人から奪い、民衆に分け与える。そんなコウを捕まえようと追う同心に岡引たち。 スクープを狙う瓦版屋もいる。

ふと、通り過ぎる人波の中に、師匠とクロが見えたような気がした。

同心の追跡を躱し、小判をばら撒く。 瓦版屋が写真機を構えている。 応えるように笑って、 ポーズを決めるコウ。 義賊は今日も町を駆け抜けていく。

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